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【参加レポート】道南の冬が育む「命のあたたかさ」を味わう。老舗割烹の料理長に学ぶ、親子のごっこ汁作り

凍てつく寒さが厳しい道南の冬。しかし、この季節だからこそ出合える特別な「ご馳走」があります。

2026年2月1日、函館市とNPO法人のこたべの主催により、地域の伝統食を次世代に繋ぐ料理体験プログラム「うれしぱ ごっこ汁」が開催されました。

舞台は、函館を代表する名旅館の料理長から直接手ほどきを受けるという、なんとも贅沢な料理教室。親子で大きな「ごっこ(ホテイウオ)」と向き合い、出汁の香りに包まれ、自分たちの手で作り上げる——。

ただ「食べる」だけではない。漁師さんの想いやプロの技に触れることで、子どもたちの心に「食」への好奇心と、将来へのささやかな憧れが芽生えた、温かな一日の様子をレポートします。


なぜ、いま「ごっこ汁」を親子で作るのか

道南の冬の風物詩である「ごっこ汁」。そのぷるぷるとした食感と、磯の香り豊かな醤油仕立ての汁は、この地に住む人々にとって心に灯をともすような家庭の味です。

しかし、食の多様化が進む中で、一から魚を捌き、本格的な出汁をとって家庭で作る機会は少しずつ減っています。私たちがこのプログラムに込めたのは、「本物の味と技に触れることで、感性を揺さぶる」という想いです。

第一線で活躍する料理長の包丁捌きを間近で見ること。命をいただく重みを知ること。そして、五感を使って調理すること。この体験が、子どもたちにとって将来の職業の選択肢を広げ、郷土の文化を誇りに思うきっかけになってほしいと願っています。


今回のプログラムにおける、心震える5つのポイントをご紹介します。

1. 「ごっこ」の不思議に迫るクイズ

まずは、不思議な見た目をした魚「ごっこ」を知ることからスタート。吸盤でお腹をくっつける習性や、冬にしか現れない貴重な存在であることをクイズ形式で学びます。子どもたちの目は、目の前の実物を前にキラキラと輝いていました。

2. 割烹旅館若松・料理長の「魔法の手」

講師は、名門『割烹旅館 若松』の料理長。プロが手際よく昆布と鰹で出汁を引くと、会場いっぱいに芳醇な、どこかホッとする香りが立ち上ります。「黄金色の出汁」を一口含んだ子どもたちの、「おいしい……!」という驚きの表情が印象的でした。

3. 勇気を出して、親子で挑む「ごっこ捌き」

ぬるぬると滑るごっこを捌くのは、大人でも至難の業。料理長の丁寧な指導のもと、親子で協力して包丁を入れます。お腹から溢れ出すたっぷりの卵、ぷるぷるの身。命に触れる「肌感覚」を通して、食べることへの感謝が自然と湧き上がります。

4. 彩り豊かな「薬膳おにぎり」作り

ごっこ汁を待つ間、子ども薬膳の講師と一緒に、体に優しいおにぎりを作りました。それぞれの食材が持つ「効能」を学びながら、色鮮やかな具材を握ります。「この食材はお腹を温めてくれるんだよ」という言葉に、子どもたちは自分の体と食べ物の繋がりを学びました。

5. 湯気の向こうに広がる、格別の美味しさ

お椀から立ち昇る熱々の湯気。自分たちで捌いたごっこと、丁寧に引いたお出汁、そして愛情込めて握ったおにぎり。一口食べれば、身も心もとろけるような美味しさが広がります。「自分で作ると、こんなに美味しいんだ!」という自信に満ちた笑顔が、会場に溢れました。


当日のスケジュール

時間内容ポイント
10:00ごっこクイズごっこの生態や道南の漁業について楽しく学ぶ
10:30黄金の出汁取り料理長から昆布と鰹の本格的な出汁の引き方を伝授
11:00調理スタート野菜を切り、親子でメインのごっこを捌く体験
11:45薬膳おにぎり作り食材の効能を学びながら、体に嬉しいおにぎりを握る
12:30実食・交流みんなで作ったごっこ汁とおにぎりで温かなランチタイム

この体験が、未来の種になる

「包丁を持つのが初めてだったけれど、料理長みたいにかっこよく作ってみたい!」

帰り際、一人の男の子がそう話してくれました。

今回の「うれしぱ ごっこ汁」は、単なる料理教室ではありません。地域のプロフェッショナルと触れ合い、本物の素材に触れることで、子どもたちの「美味しい」の基準を作り、将来の夢の種をまく時間でした。

道南には、まだまだ私たちが守り、伝えていくべき豊かな食文化があります。これからも私たちは、この土地ならではの「物語」を体験という形で届けていきたいと考えています。

ご参加いただいた皆様、そして素晴らしい技術と想いを伝えてくださった料理長、講師の皆様、本当にありがとうございました。

Feb 02, 2026 Updated